9/22/2007

清算結了した会社名義の建物表題登記と所有権移転登記 その3

前回の記事で表題登記のところまでお話しました。
私が担当するのは、「会社の解散前、存立中に会社名義の不動産を代表清算人に売買をした」という部分の登記です。
2007年9月20日の投稿で、この登記を申請する会社側の代表者は、閉鎖登記簿謄本に名前が載っている代表清算人だということは解決済みです。権利者はもちろん個人です。
未解決の問題点は、この取引が利益相反取引であるということです。
この会社は解散以前に、会社と代表取締役の利益相反取引についてこれを容認する取締役会決議を得ていましたので、実体上有効であることは間違いありません。

しかし、登記申請書に添付する取締役会議事録とその附属書類について疑義が生じました。
一般に、利益相反に関する取締役会議事録を登記申請書添付する場合は、決議当時の取締役・監査役の氏名を明らかにするため、役員欄用紙の謄本と議事録に捺印をした取締役・監査役の印鑑証明書を添付します。この場合、代表取締役については法務局発行の印鑑証明書、他の取締役・監査役については市区町村長発行の印鑑証明書を添付します。

この会社は議事録に捺印した当時の役員は全て生存しており、印鑑証明書をご提出いただくことにも、何の障害もありませんでした。ただし代表清算人の捺印して印鑑については法務局発行の印鑑証明書は物理的に存在しないという状態でした。

この場合、代表取締役には、どの印鑑証明書をつければよいのでしょうか。これが疑問点です。

取締役会議事録に捺印している代表取締役の印鑑は当然代表印です。現在の段階では旧代表取締役の個人の実印と個人の印鑑証明書を使って旧代表取締役作成の書類の真実性を担保することは可能ですが、昔作成した議事録に今から旧代表取締役が個人の実印を捺印するわけにはまいりません。

この件は当方の判断では黒白つけられませんでしたので、法務局に照会させてもらいました。
法務局の回答では、議事録を原本還付する時に代表清算人が「本書は原本の写しに相違ない。」と自己認証文を付しますが、その末尾に個人の実印を押して個人の印鑑証明書をつけてくれれば良い、ということでした。
個人の印鑑証明書は、昭和30年4月14日 民事甲708 による義務者として提出する個人の印鑑証明書があるから、それで還付する議事録の真実性も担保することができるわけです。もし義務者として印鑑証明書を提出することがない場合は、原本を還付した議事録のコピーの方に個人の印鑑証明書を添付するような形(あるいは清算人会議事録が適法に成立されたものに間違いがない旨を記した上申書を提出する形)になるのであろうと思います。

このように私の悩みは、ささやかなものでありましたが今まで全く経験したことのない、原本還付という制度を上手に使った代用策を知ることができて、大いに参考になりました。

9/20/2007

清算結了した会社名義の建物表題登記と所有権移転登記 その2

現在の建物の登記名義人は、清算結了した会社になっています。
会社については、閉鎖登記簿謄本しか出ません。
当時の代表清算人は、幸いにもまだ生存しています。
このような状態で、建物表題登記(床面積の変更の登記)を最初に行うことになりましたが、1番貧乏クジを引いたのはこの業務を担当する土地家屋調査士さんでしたでしょうか。
表題登記は私どもの仕事の守備外ですので、土地家屋調査士さんの指示に従うしかないのですが、土地家屋調査士さんは会社の清算結了登記など、専門外ですので細かいところまで知る由もなく、調査士さんと司法書士でわからない部分を補い合いながら手続きを進めることになりました。

1、表題登記は誰が行うのか。必要書類は何か。
増築は、会社の清算結了前に行われました。
現在の建物登記名義人は会社ですから、常識的に考えて会社が表題登記を行うのがスジです。
問題は、清算結了した会社に登記を遂行する能力があるのかどうかです。理論的にどのような理由からそうなるのかは判然としませんが、先例を調べて、次のような通達を発見しました。
昭和30年4月14日 民事甲708
〔要旨〕 株式会社清算結了登記後、既往の売却不動産についてする所有権移転登記にあっては、その申請書に添付すべき登記義務者の印鑑証明書としては、市町村長の証明にかかる代表清算人個人の印鑑証明書で足りる。

これを裏返して見ますと、申請人は会社、その代表機関は当時の代表清算人ということが見て取れます。
この旨を調査士さんにお伝えし、表題登記をやっていただきました。
建物の引き渡し証明書や施工会社の印鑑証明書、代表者事項証明書などは建物所有者が紛失してしまったため、当時の施工会社から再交付願いました。
建物図面や各階平面図に捺印していただく会社の印鑑と登記に使用する印鑑は何を使うのかが引き続き問題となりました。
私は上記の先例を見たので、何にでもつぶしが聞くと思いましたので、代表清算人の個人の実印を押していただくのが最良の選択と思いましたが、法務局の見解では、一応会社だから当時の代表印でも押してくれれば良いとのことでした。
これで問題は解決し、建物の表題登記は無事に完了いたしました。

次は私の番になります。

清算結了した会社名義不動産の建物表題登記と所有権移転登記

前回の記事で住専の抵当権抹消登記に関する経験を自慢げに書きましたが、あれは言ってみれば抵当権の抹消のみですから、「結果として出来ればよい」という部分があります。抵当権の設定された当該不動産の売買が、抹消登記と同時に行われるわけではありませんので、言い方は悪いですが、気楽な部分がありました。
ところがその後、自慢したのがたたったのか、もっとややこしい案件が持ち込まれました。
3年ほど前に清算結了した会社がありまして、清算の途中で会社名義の不動産を、社長個人に売却したのですが、登録免許税がもったいないので登記はしないでいた物件がありました。
今度、この物件を第三者に売買することになったので、実態に合わせて、増改築による床面積の変更の表題登記を行う。その後、会社から社長個人の名義にし、そこから第三者への売買の登記を行うのです。
具体的な説明に入る前に、前提の問題を整理します。
A,清算結了前に、所有権移転が行われたこと。
B,清算結了後に、所有権移転登記をする義務だけが残っていて、その義務の履行行為だけを今回行うということ。
以上の点を踏まえておかないと話が混乱します。
ちなみに、清算結了登記を行った後に所有権移転があった場合は、会社は未だ清算結了していないため、商業登記の清算結了登記を一度抹消し、会社を復活させてから所有権移転登記をし、その後に改めて清算結了の登記を行うことになるはずですので、税務申告のやり直しなども含め、大変なことになると思います。そのようなことにならないようにしなくてはいけません。

与えられた問題を解決するためにはどのようにすれば良いか、じっくり考えましたが、いろいろと、頭を悩ます疑問が湧いてきます。私たち司法書士の立場からみますと、問題点は次のように要約されました。
1、表題登記は誰が行うのか。必要書類は何か。
2、所有権移転登記を行う際の当事者と必要書類は何か。
次回にその詳細について記述します。

9/18/2007

住専の抵当権抹消登記について その4

次に登記を申請する直前に気がついた問題があります。登記の事前通知はどこに送られるのでしょうか。
会社の本店、すなわち商業登記簿に登記された会社の最終の本店にあてて事前通知を送付するのが筋でありましょうが、この会社は平成11年に清算結了しておりますので例えば郵便局に転送通知を出していたとしても果たしてそのように長期間転送されるものなのか不安です。または新しい(最終の商業登記簿謄本による)本店に郵送してもらえるのかどうか、よくわかりませんでした。
あるいは事前通知は、代表清算人個人宅に送付されるのか、しかも登記されている当時の代表清算人住所と現在の代表清算人住所に相違がある場合、最新の代表清算人住所に送ってもらえるのかどうかの問題です。
せっかくここまでやったのに、いざ本番で、事前通知が到達しなかったので登記ができなかった、ということは避けたいと思いました。
そこで登記申請時には法務局で、事前通知は代表清算人個人の住所にあてて発信して下さいとお願いをしました。特に何も言われませんでしたのでそれでよかったのだと思います。
待つこと二週間近く、事前通知がその間に法務局に到着しなかった場合は却下処分を喰らいますが、申請から二週間ぎりぎりくらいに登記手続が終了し、ほっと胸をなでおろしたのでありました。

住専の抵当権抹消登記について その3

ご存知の方も多いと思いますが、整理回収機構は債権回収の専門機関でして、多数の弁護士が社員となり業務を行っています。
そういう次第で、こちらとしては添付書類などにつき特に依頼することもなく、全部整理回収機構の担当の方にお任せで揃えていただきました。
あらすじは前回お話しした通りですが、
1、清算結了した会社が清算結了前に消滅した抵当権の登記義務を清算結了後に履行する、ということです。
2、物件の所有者が、抵当権の設定契約書(抵当権設定登記済証)を紛失しているため、手続きは事前通知手続きとなります。

以上のように手続きは1~2を足し合わせたものとなります。こちらから整理回収機構にある程度の資料をお送りし、何かが戻って来るのを待っておりました。
戻ってきた書類は次の通りです。
1、旧「J」社の閉鎖登記簿謄本
2、代表清算人の住民票
3、代表清算人の印鑑証明書
4、旧「J」社の本店移転の経過を証明することができない旨の上申書
5、抵当権解除証書、委任状
1は変更証明書と代表清算人の資格を証明する書類
2は登記されている代表清算人の住所が登記簿変更になったので、登記された住所と現在の住所との異動を証明する書類
3は事前通知による抵当権抹消ですから登記義務者の印鑑証明書。しかしすでに当該社は清算結了後でありますから代表清算人の印鑑も抹消されていますので、代表清算人の孤児の印鑑証明書をつけるということになります。
4は旧「J」社が遥か昔に本店移転をしたときの記録ですが、帳簿の保存期間経過のため昔の本店移転に関する事項を記載した登記用紙が配置されてしまっていてどうすることもできないので上申書を書いて登記を認めてもらおうということであります。
5は通常の銀行などの抵当権抹消登記に使用するものと同じ形のものがでてきました。特に気になる部分といえば会社の代表者の資格指名の部分ですが、
 本店 東京都中央区うんぬん
 商号 株式会社J
 代表清算人 何某    (個人の実印を押捺)
というようにいたって簡単なものでした。
このなかでなるほどもっともだと感心したのが、個人の実印を押捺する部分でして、会社の存続中であれば会社の代表委員を捺印して、会社の印鑑証明書を添付の上、事前通知による抹消手続きとなるのですが、会社が清算結了してしまった関係上会社の印鑑証明書はもちろん出ませんので、代表清算人が個人の実印を捺印し、代表清算人の在住する市区町村発行の印鑑証明書を添付するという部分です。これは事前通知用の印鑑証明書ですから登記申請時点において発行後3カ月以内のものであることが必要です。

住専の抵当権抹消登記について その2

前回住宅金融専門会社(いわゆる住専)の抵当権抹消登記について、どのように解決するか悩んでいる旨を書きましたが、とりあえずどこかに電話をかけてとっかかりを作らないと話がどうにも進まないため、整理回収機構(RCC)に電話をかけてみることにしました。
現在に至る経過を事細かく説明をし、どのようにしたらよいかを尋ねたところ、少なくとも整理回収機構は旧「J」社から営業譲渡を受けた事に間違いがないので、窓口になっていただけるとのことでした。
整理回収機構が旧「J」社から営業譲渡を受けたのは、ずいぶん前の話ではありますが平成に入ってからのことです。
一方当該抵当権の債務を全額弁済したのは昭和60年ごろであったとのことです。
とすると、整理回収機構が営業譲渡を受ける遥か以前に債権は弁済により消滅し、抵当権は附従性により消滅していることになります。
整理回収機構が旧「J」社から営業譲渡を受けた段階ですでに債務はなく、その時点では何も引き継いだわけではありません。またその時点では旧「J」社はまだ存続しておりました。
原則に立ち戻って考えてみますと、抵当権抹消登記の義務者は旧「J」社であり、これは営業には含まれない事象でしょうから、整理回収機構がどうすることもできない話のはずです。しかしその後旧「J」社は解散手続きに入り、平成11年ごろに清算結了されたので、現在は存在していないわけです。すなわち、この抵当権抹消登記に関しては、本物件の所有者(その代理人である私)と旧「J」社との話し合いで進めるべきであって、整理回収機構はなんら関与すべきではないというのが本当の道筋です。しかし当方としては旧「J」社の閉鎖登記簿謄本ももっていませんし、連絡先も分からないでしょうからということで整理回収機構が特別に口をきいてくれることになりまして、大変感謝している次第です。

9/17/2007

大田区洗足池 妙福寺

9月の暑い日に、大田区の洗足池に遊びに行きました。
ずっと昔から気になっていたところなのですが、常にどこかに行く時に前をとおるだけで、その池が目的地になったことはないため、結果として、当地に降り立つことは一度もありませんでした。
昼食をかねて出かけてみることにしました。

洗足池は、太田観光協会のパンフレットによると日蓮上人が身延山から常陸国へ向かう途中、休憩のために千束池に立ち寄って、足を洗ったからその名前が付けられたと言われています。
池の周りに1周1200メートルくらいの遊歩道が作られていて、その遊歩道の途中には歴史的に有意義なスポットが存在しています。
出発点からほど近い、妙福寺というお寺に立ち寄って、色々拝見しました。
竹林の傍ら、参道の土の香りと色彩がとても東京の寺とは思えないほど深みのある風情を醸し出していました。
そもそも東京に限らず、池沼のほとりにある寺というのは珍しいので、今まで感じたことのない様な風情を感じたのでしょう。


袈裟掛けの松も拝見し、馬頭観音にお参りも済ませて、さあ失礼しようと思って何気なくお庭の石灯籠を眺めていると、中にお客さんが居ました。


身繕いをしていまして、カメラをズームにして、もっとアップの写真を撮りたかったのですが、おたおたしている間に逃げられてしまいました。

なんだかのんびりして楽しそうにしていましたよ。

夏の思い出

司法書士の登記に関する仕事では、
1、書類を作成
2、法務局へ提出
3、法務局から回収
という三つのプロセスを踏むのですが、平成16年ころまでは2と3のステップで、必ず法務局に出頭しなければならなかったため、たいへんなロスを発生させていました。
不動産登記でいえば、土地建物の所有者の住所変更の登記というような、物件変動という面で登記の重要性を測る場合に大して意味をなさない登記の場合でも、書類を法務局に提出し、登記ができあがると法務局で回収しに行くということをやっていました。
ところが、商業登記でオンライン申請が行われるようになると、そもそも登記申請自体に法務局へ出張する必要がなく、添付書類は郵便で送ればよいことになりました。
一度こうなりますと、あとは雪崩を打つように法務局への出頭は緩和され、現在では、登記識別情報や権利書、又はそれと同程度の重要な書類が返戻書類に含まれる場合のみ、受領のために法務局へ出張すればよいことになりました。

今年の夏は、関東地方の中でですがあちこちの法務局に出張しました。
静岡県の熱海、千葉県の佐倉、栃木県の小山など、JRに乗って片道2時間程度かかるような法務局です。
小山の法務局に行く途中にある和菓子屋さん(一度寄ってみたいと思いつつ未だ果たせていません。)



こちらもその近所の石材店ですが、かわいらしい動物の石像がたくさんおいてあったので思わず写真に撮ってしまいました。



都市部であわただしくちょこちょこと生活している者にとっては、このような出張は結構楽しいものです。
行き帰りの電車の中でぐっすり眠って睡眠不足を補うのもよし、あるいは読書三昧というのもよしで、普段することができないことをやろうと、心躍らせながら計画をたてます。
自分の生活圏から離れた、見知らぬ土地の景色や人々の暮らしぶりを肌で感じて、大変楽しいものです。
ご当地グッズを買うという楽しみもあります。その地域の気候にぴったりと合った、防寒具や衣類、小物などが見つかることもあります。